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SS:それから

いつも独りぼっちだった。


いや、


独りぼっちの自分を演じてたんだ。


いつも誰かのせいにして、


いつも世界を斜に見下して、


悲劇の主人公を気どって。




ははは、これじゃまるで喜劇だ。




自分の寂しさを埋めたいだけ、


こんなにも愛されていたのに。


あまりの幼稚さに涙がでてくる。












なんで生まれてきたんだろう。






いいや、


生まれたきた意味を作ろう。


私は独りじゃない。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
太陽が波間でキラキラ輝いている。


アルルは海の香りを胸いっぱいに吸い込んだ。

マリアが寂しそうに見つめている。



「姫君、スズミヤ卿へお伝えください。帝国の力の根源はマナであることを」

ガーム・ベル=イブリスのローブが、潮風にひるがえった。


「アルルさえ居れば、マナを封じる術を見つけることができるからして」

風に飛ばされそうになりながら、プロ・クーン博士は言った。



「いずれ、王家の一族が蜂起する時が参りましょう。それまで、アルルは人として我らと共に」

サクラは、ガーム・ベルを見つめた。

「わかりました。アルルをお願いします」


サクラの言葉に少年が振り返る。

潮風に揺れる蒼い髪、

蒼い瞳がサクラを見つめる。


「アルル=デュオス」

サクラは少年へ声をかけた。

「お別れよ」

「ああ」

蒼い瞳の少年は応えた。



サクラはアルルを抱きしめた。

アルルの唇にサクラの唇が重なる――





「どこにいてもずっと一緒よ」

「ああ、ずっと一緒だ」

サクラの涙が胸に滲むのを感じた。




「行こう。アルル」

ガーム・ベルはローブの襟を立てながら声をかけた。

アルルはサクラの肩に手を添え、ゆっくり身体を離した。


「さよならは言わないよ」

少年が右手を水平に上げると、蒼い光に包まれブルードラゴンの姿に変わった。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
汽笛を鳴らしながら、船は偽島から離れてゆく。



 ―― 宝玉が集まっていたら世界を救えただろうか。

 
船首に手をかけ、サクラは空を見上げた。


 ―― ううん、もういい。



「クオォォォーーーーン」

ガーム・ベル達を乗せたブルードラゴンが、真っ青な空を大きく旋回しながらシルグムントへ飛び去った。



 ―― 仲間を信じよう。きっと奇跡を起こせる。



「あ、アルマさん達やぁ、ご主人さまぁ〜」

マリアが指をさす船上でアルテリア達が手を振っていた。


「ありがとーう!」

サクラは太陽のような笑顔で手を振り返した。



やわらかな風が、いつまでもサクラ達を包み込む。


いつまでも、


いつまでも。


 作者

パティ☆
サクラとアルルの物語「旅立ち編」。これで2人の物語はおしまい。SS:始まりSS:手紙SS:黒い雷光SS:儚想SS:道連れSS:血雫SS:最終兵器SS:謀略SS:交差SS:死闘 前編SS:死闘 中編SS:死闘 後編SS:それから と読み進めていただければ幸いです。