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SS:交差

遠く、シルグムント国境付近に暗黒の炎が燃え上がる――


パドメとアルルは、神殿の上からその炎を見つめ続けた。


 ――パドメ

 ――はい

 ――聞コエタカ?

 ――はい



パドメとアルルは短い言葉を交わすと、再び沈黙し暗黒の炎を見つめ続けた。



  ―― パドメにも兄の・・・ガーム・ベルの心の声が聞こえた



アルルが振り返ると、いつものように優しく微笑む金髪の少女が居た。


      ただ、その碧い瞳に泪をためて ――


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「遅かった」

魔法陣からの転送が完了するや、ガーム・ベル=イブリスは走りだした。


「陳謝する、もっと早くに気付くべきであったからして・・・」

ガーム・ベルに続くプロ・クーンの目は疲労で血走っていた。


「いえ、博士のせいではありません」

「あの娘を助けなくては・・・」

「急ぎましょう!」

二人は遺跡外へ続く、次の魔法陣へ駆け抜けた。


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「・・・・クッ」

氷のような金属の冷たさにアルルは目を覚ました。


「おはよう、我が愛すべき兵器殿。ククク・・・」

目を琥珀色に光らせ将校が言った。



アルルは四肢に魔印錠が枷せられていることに気付いた。

「・・・サクラニ指一本デモ触レテミロ・・・皆殺シニシテヤル」

アルルは全身に魔闘気をみなぎらせた。



「姫君は大切な人質だ、殺しはしない」

将校はゆっくりとアルルへ近づいた。



「ただ、お前が殺すのは私ではなく、反乱軍の雑魚共、だ!」


将校は獣のように目を光らせ、アルルへ顔を近づけた。

「お前は我々が作り出した生物兵器、なんだよw」



       ――――!?



「そもそもドラゴンに変身能力なんかある訳ねぇだろw」


       ――・・・な・・・



「ハハハハァー!・・・お前はバイオ兵器なんだよぉーwww」





         ―――そ・・・    そんな    ・・・ 








           「・・・ウソダ!」


「既に、お前が生物兵器であることは流布した・・・貴様の居場所は無い・・・・クク・・・クハハー!」



アルルの四肢に繋げられた魔枷により魔力が吸収されてゆく。


          ――嘘だ・・・私は一体何物なんだ・・・?





薄れ行く意識の中、アルルの脳裏にサクラの笑顔が浮かぶ



         ―――サクラ

 

    もう愛する者を失いたくない!


               ――サクラ・・・パドメ・・・


           




将校を睨みつけたまま、アルルの心は真っ白になった。





「黒い雷光が遺跡外に出ました!」



「ククク、他愛も無い。ジュドウ、ゆくぞっ!」

「御意っ!」







      遺跡外の空には真っ赤に染まった月が見下ろして――