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SS:道連れ

港に接岸した船から次々と荷物が降ろされてゆき、サクラはぼんやりその風景を眺めていました。

「行コウ、サクラ」

「え、ええ、そうね」

サクラは我に返ると、慌ててタラップを降りてゆきました。


「コンナ終ワリ方デ本当ニヨカッタノカ?」

アルルがサクラに尋ねました。

「ええ・・・仕方ないわ」

寂しげに微笑みながらサクラは答えました。



ギルドの仲間達に宛てた手紙・・・。

それをレギオンズソウルの主人に託し、夜が明ける前に船で島を離れたのでした。


(お別れじゃない・・・必ず戻ってくる)

サクラは静かに歩き始めました。



「ん、何や?あれ」

マリアが指を示す先に検問所らしきものが見えました。

「アレハ・・・ガルバルディーン帝国ノ紋章ダナ」

「なぜこんな所に帝国が・・・」


「動くなっ!!」

突如声がするや、サクラは帝国の兵士達に羽交い絞めにされました。

「きゃっ、何するの、この変態!ロリコン!」


「口の悪い娘だな、何者だぁ?」

口髭を生やした兵士が、やる気の無い声でサクラに尋ねました。


「こらー!!じぱんぐのお姫様になんちゅうことすんねん!控えおろ〜う!」

(バ、バカ、何言ッテンダ、コノトンマ〜!)

アルルは思わず額へ手をやり、マリアはしまったとばかりに両手で口を塞ぎました。


「何ぃ?じぱんぐの姫だとぉ〜?」

口髭の兵士はにんまりと笑うと、サクラをなめ回すように眺めました。


「へっへっ・・・うだつのあがらねぇ平民出にやっと巡ってきた幸運か、それとも破滅の罠か・・・」

「な・・何する気?ち、近寄らないでよっ」



兵士達に囲まれ絶対絶命のサクラ。

その時、真っ白な煙が兵士達を包み込みました。

「なんじゃこりゃ〜!」

「目が、目がああぁ!」



「火急に!こちらであるからして!」

兵士達が大騒ぎをする中、誰かがサクラの手を引きました。

アルルとマリアも夢中で声のする方に駆け出しました。


真っ暗な道を駆け、橋を渡り、物陰にすべりこむサクラ達。


「はぁはぁ・・あ、ありがとう。私はサクラ。サクラ=スズミヤ」

「礼には及ばぬからして」

暗がりに目が馴染み始め、声の主の姿がぼんやり浮かび上がってきました。



白衣に分厚い百科事典を小脇に抱えた、一見普通の学者風の男。

ただひとつ違っていたのは・・・どう見ても猫なのでした。

「・・・猫?」

「我輩は猫ではない。れっきとした学者であるからして」


   ――ガクン!


そのとき、突然地面が揺れ始めました。

「ワワ、地震カー!?」

「地震ではなく出航であるからして」

「ええー?出航おぉ!?」

どうやら、いつの間にか乗ってきた船へ戻っていたようです。



「さよう。偽島なる人工島へ赴くのであるからして」

「はあぁ?私たち偽島から戻ったばかりなのに〜」

「それは好都合。我が同志の下への案内を依頼したく」

「何なのよー、それぇー」



サクラ達は奇妙な道連れと共に、一路偽島へ、仲間の下へ戻ることになったのでした。

 作者

パティ☆