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SS:始まり

かつて、シルグムントにはいくつかの騎士団が存在し、各地域を守護していた。

中でも妖魔国との国境を守る第9騎士団は、黒備えと数々の勲功から「漆黒の騎士団」と称され

シルグムント戦役時は、数万にも及ぶ妖魔軍と帝国軍の挟撃の中、たった数千の騎馬隊で立ち向かい

3日間も国境を越えさせなかったという。


しかし多勢に無勢、ついに退路を断たれた第9騎士団は決死の突撃を試み、戦場の露と消え去ったのである。





遺跡外の場末の酒場――


一人の男がバーボンのグラスを眺めていた。

レイバンのサングラスに無精ひげ。頬にあるいくつもの傷が

彼の壮絶な過去を物語っていた。


「うーぃっ、おぃ!てめえ!」

「ひっく、このやるぁ!ふざけたサングラスをしやがってぇ〜!」


いかにもPKといった風情の2人組が、男の両脇に座り込んだ。

とばっちりを恐れ、そそくさとその場から離れる者たち。



「・・・」

「あんだぁ?びびって声も出ねぇかよぅ〜」

「・・・消えろ」

「はぁあ?!」

「・・・皆、迷惑してる」

男はバーボンを呑み干すと、ゆっくり酒場の出口へと向かった。


「く、くらぁぁっ!!このガキャあっ!」

「ま、待ちやがれぇえ!」

PK風の二人組は立ち上がろうとしたが、足が地を掴まない??


「お、おおおおーーーいいっ!?」

「お、オレッちの足が、足がぁぁあああ!?」

PK風の男たちは、自分の足がくるぶしから無くなって

いるのを見て大声で喚きたてた。



「すまねえが、こいつで手当てしてやってくれ」

男は、酒場の店主へ金貨を投げてよこした。


目を白黒させる店主を尻目に酒場を後にする。



「・・・」

夜空を仰ぐと、男はゆっくりと宿屋街へ歩を進め始めた。

 作者

パティ☆