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SS:儚想

「イブリス様。あれは・・・?」

遥か先から飛竜(ワイバーン)の群れがこちらへ向かってくる。

「・・・妖魔の軍でしょうか?」

「いや、この時間にウルディアの結界を破ることはできまい」

第9騎士団はその歩を止め、ドラゴン達が頭上を旋回するのを眺めた。



「お兄様ーーっ!」

ブルードラゴンに乗った美しい少女がガーム・ベルに手を上げた。

「パドメ!」

「お兄様っ!」

パドメはガーム・ベルの側に降り立った。



「お兄様、この先に帝国軍が待ち伏せをしています!」

「そうか」

ガーム・ベルは優しく微笑みながら答えた。


「お退きください、罠ですっ!!」

パドメは叫んだ。

「漆黒の騎士団が守る国境となれば、そうそう攻め込まれまい」

ガーム・ベルは澄み切った瞳で妹を見上げた。


「死ヌ気カ?」

パドメが乗るブルードラゴンが尋ねた。

「ふ・・・犬死はせん」

「お兄様っ!!」


ガーム・ベルは騎士達に向かって声を上げた。

「我が血はシルグムントの地に!我が魂は女神ウルディアの下へ!」

「おおおおぉぉぉーーっ!!」

漆黒の騎士団は、パドメを後に国境を目指して進み始めた。



「・・・うっ・・・あぁ・・・」

ブルードラゴンは、その背に少女の涙がこぼれるのを感じた。

(・・・パドメ)



 ――女神の使い蒼竜よ!

(――!)

馬蹄の音にかき消されたガーム・ベルの声が蒼竜の耳には聞こえた。

――我が妹をたのむ・・・ウルディアの加護(まもり)あれ!!

(――貴様も・・・な・・・)


「パドメ、行コウ。民ガ我ラヲ待ッテ居ル」

「そうですね・・・行きましょう」


悲しげな瞳で蒼竜は黒備えの騎士達を見送った。




 地平線に泪のような夕日が落ちる――


  
    黄昏と共に消え行く想いが――



       沈み行く夕日の如く――

 作者

パティ☆

同タイトルのSSがあることに気付いておりませんでしたので訂正を...(汗)