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SS:女神の子

 本文


――・・・クラ

(う・・ん・・)

――サクラ

(ん・・・え?)


サクラが目を上げると、そこに純白の聖衣をまとった美しい女性が微笑んでいました。

(あなたは・・・?)

――私の名はウルディア

(私に何の用なの?)

――西へ向かうのです。そこに貴女が成すべきことがあります

(西?成すべきこと・・・?)

――世界には貴女の助けを待っている人達がたくさん居ます。戦乱で家族を失い、苦しみ、悲しみ、救いを求める人達が

(ちょっと待って!私に・・・私に人々を救えというの?・・・無理!そんなの無理よ!)

――大丈夫、貴女は選ばれし者、この世界に調和をもたらす力を与えられた者

(わ、私はただの女の子で・・・そ、そんな大それた力なんかあるはずがなくて・・・)

――さぁ、お行きなさい、西の島へ。そして多くの人達と出会うのです。貴女の成長の礎となり、そして力になってくれるでしょう

(ま、待って、ウルディア!貴女は何者なの?)

――私はこの地を見守る者・・・そして貴女自身・・・

(待って・・お願い・・・私・・私・・・)



「喝っ!!」
背中を如意棒で叩かれたサクラは、思わずもんどり打って倒れました。

「禅の最中に居眠りとは、まだまだ修業が足りんようじゃな」
「ご、ごめんなさい、老師。でも私、今お告げを聞いたんです」
「お告げじゃと。夢を見るほど眠りこけるとは、けしからんの」
「ウルディア・・そうウルディアって言う女の人が話しかけてきたんです」

「・・・ウルディア、じゃと?」

「西の島へ行けって・・・私は選ばれし者だって・・・」
「・・・間違いなくそう言ったのか」
「はい・・・ご存知なんですか、老師?」
「うむ、かつてシルグムントへ旅に出ていたときに聞いたことがある。竜騎士の村と呼ばれた地を守る女神の話を」
「竜騎士の村・・・。父が戦役に赴いた地です!」

話を聞いていたアルルは、思い出したように言いました。
「ソウイエバ、私ニ付イテイタ鞍ニ『女神ウルディアの守りあれ』ッテ書イテアッタゾ」

「確か、その蒼竜は竜騎士の村で助けられたと申しておったの」
老師はアルルへ目をやりました。

「女神ウルディア・・・蒼き神竜はその使い・・・なるほどの」
「老師・・・私はどうしたらいいのですか」

老師は闘技場に腰を降ろすと、袂から手紙を出しました。

「偽島への招待状じゃ」
「偽島?」
「西方にある島じゃ。そこにはお宝が眠っているらしくての。世界中から猛者共が集まっているらしいのじゃ」
「・・・ウルディアの言う西の島って・・・」
「うむ、恐らくはこのことじゃろうて」

サクラは老師へ向き直りました。
「私、自分を試してみたいです。修行をお休みさせて下さい、老師」
「・・・ふむ」
「偽島へ行かせて下さい。お願いします」
「よかろう。シリュウへは儂から話しておこうかの」
「有難うございます、老師」

「サクラよ、これを持ってゆきなさい」
老師はローブと斧をサクラへ手渡しました。

「蒼天のローブと桜嵐の斧じゃ。それの魔力がお前を守ってくれるじゃろうて」
「わぁーすごいわ、有難うございます。よーし、そうと決まれば早速準備よ!」
「オ、オイ、待テヨー」
脱兎のごとく走り出すサクラをアルルは必死で追いかけてゆきました。

(女神ウルディアの子・・・世界に調和をもたらす選ばれし者・・・あの子がそうであったとは・・・)
老師は、サクラの後姿を見送りながら思いをめぐらせるのでした。



(女神ウルディア・・・あなたは本当に私なの・・?)
走りながら、サクラはウルディアの言葉を思い出していました。

(もし、私にあなたが言うような力が無かったとしても・・・私は決めたわ)
サクラは立ち止まると空を見上げました。

(きっと・・・きっと、皆を助けてみせる。じぱんぐを守ってみせる)


「サクラ、ドウシタ?」
「ううん、なんでもないわ。アルル背中に乗せて」
「アァ、シッカリ掴マッテロヨ。ソレッ!」


アルルとサクラは大空へ飛び立ちました。

真っ青な空――

自由に流れる雲――

金色の実りをたなびかせる稲穂――


二人の気持ちは一つになり偽島へと飛び立っていくのでした。

三姫の集いへ続く

 作者

パティ☆