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SS:逃亡者

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ある戦いがあった。かつては親交があった者達が争う。
悲しい事ではあるがそれは世界の流れにより起こり繰り返されるものだった。
歴史の一部を切り取ってみても解るが人の世界に争いの種は尽きない。
どんなに友好な関係であれ、状況に逆らえない。人の感情は人の手を離れ・・・巨大な怪物となる事があるのである。
その巨大な怪物は止まる事をしらない。そして行き着く先は「滅び」だけであった。
彼女の目的はその人の手を離れた「怪物」を滅ぼす・・・ただそれだけが目的であった。

戦場を離れた彼女は、思いついた方向へと進んでみた。
地理を知らない彼女にとってはまずは安全な場所への退避が最初にとるべき選択だった。
進む事数日、大きな町並みと城が見えた。どうやらここは城下町のようであった。
城下町近辺の森へ魔剣を隠した上で城下町へと入り、鎧を二束三文で売り払った彼女は見知った女性を町並みに見つけた。
「こんにちは、プララさん」
呼びかけた事でこちらに気付いた女性は手を振って応えた。
「むに〜、サリアさん」
「そういえばお探しの方は見つかりましたか?」
「残念ですがまだですね」
「そちらはどうですか?」
「人と人ならざる者の争いを見てきました」
「それで・・・?」
「えぇ、一振りの剣とその場にいた者達の会話を聞いてきたのですけどね・・・」
「とりあえず、立ち話も何ですから私の泊まっている宿に行きましょう」
「えぇ、解りました」
そして二人はプララの滞在する宿へと向かった。

「そうそう・・・この世界では私は水薙 千鶴と名乗りますのでプララさんも覚えて置いてくださいね」
「わかりました、千鶴さんと呼びますね。でも名前を変える必要があるのですか?」
「気分の問題だけですけどね。私の能力を引き出すのに実は [名前] は大きな意味がありますので・・・」
「むに、了解です」
「そういえばサリアさん、どんな話を聞いてきたのですか?」
「たしか・・・『アルカードよ、俺を討った所で何も変わらぬ・・・』とか『俺も貴様も盤上の駒に過ぎぬのだ。』とか『我が呪い・・・貴様の末期まで持っていくがよい。』とか人ならざる者が言っておりましたね。」
「アルカード・・・?たしか、この国の王の名前がアルカードだったような気がしますね。あと、その争いはこの国と妖魔国の争いでしょう」
「ふむふむ、私はこの世界について間もないので詳しくは世界のことを知らないのですが・・・プララさんの方は私よりは詳しそうですね」
「私も3ヶ月程前にこの世界に来たのですけどね。今はこの世界で知り合いになった人のお世話になってます」
「そうなのですか、その方の名前は?」
「アルディンさんっていいます。傭兵をやっておられるようです。今回の戦いに出撃されたのでこの一室には私一人で住んでいるのですけどね」
「なるほど」
「でも、そろそろアルディンさんのお世話になりっぱなしも悪いし、この国で得られる情報もほとんど無さそうなので一言話してからこの国から出ようとは思っているのですけどね」
「私も少しの間はこの国で情報とか収集したいのでこの国を離れる時は一緒に出ましょうか。一人よりも二人の方が色々と出来ますし・・・」
「いいですね。じゃあ、それで」
「では決まりで・・・この国の事を少し教えてもらいたいですね。あとは路銀稼ぎに働き口を捜さないと・・・」
そうして彼女達は後日の行動を話してその日は別れた。

数日後・・・
千鶴は仕立屋で働いていた。
街中で仕事を探しながら歩いている際に店の店長に声をかけられて働く事になったのだ。
元々モデルでのその場限りでの話だったのだが、千鶴の知識や話術を店長は気に入ってか雇われる事になった。
王宮御用達の仕立屋だったらしく品揃えの多さ、品質の良さは素晴しいものだった。店長は幾度となく「アルテリア様のドレスを作った」際の話を自慢し、名誉に思っていた。

そんなある日、千鶴は買出しの途中に一匹の猫と出会った。
「にゃ〜」と語りかけるように鳴く猫と目線が合う。
千鶴はそんな猫の行動を注視していた。(猫・・・いえ、あれは猫では無い。多分・・・猫を装う何かですね。)
「にゃ〜にゃ〜」「食べ物が欲しいの?」「にゃ」肯定するかのように即座に返事を返す猫。
店長は無類の猫好きだったので千鶴はその猫を連れて店に帰った。
以降、度々この猫が店に遊びに来るようになった。
プララも暇を見つけて店に度々来ていた為、猫と遊ぶという事も多くあった。

だが、平穏は長く続かなかった・・・。
激しい音と共に象徴である城が半壊する光景が遠めで見てもわかる。
それは妖魔軍の飛竜達の空からの奇襲であった。
そして・・・街は恐怖の渦へと飲まれた・・・。

帝国軍、妖魔軍の波状攻撃に加え色々な状況悪化にシルグムント王国は防戦一方となっていた。
先日は国王が暗殺された事による報復から始まった戦争による被害は大きくかった。
国の柱が大きければ大きいほど抜け落ちると脆くなる。
この1年足らずで偉大な王アリアドスは暗殺され、誉れ高き武人にて皇太子で現国王のアルカードの行方不明。そして多くの将の悲報に兵達の士気は目に見えて下がり悲壮感に満ちていた。
追い詰められて城内での防衛という形になった。
だが、張り詰めた糸が切れるかのように・・・全てが失われようとしていた。

城内を揺るがす爆音と共に城の外装は崩れ落ちた。
「きゃあぁぁぁ!!!」裂くような悲鳴は上がるが爆音にかき消される。
「・・・無駄・・・諦めなさい」非常に大きな翼をした飛竜はそのような事を誰となく語りかけていた。その外見から見ても通常の飛竜ではないのは明白であった。
だが、その外観と違い紡がれた声は少女の様に幼かった。
「姫様、ここは危険です。逃げますぞ。」答えを求めずに老紳士は少女を抱えて風の様に走る。
「・・・チェックメイトですわ」竜の口に蓄えられた魔力が老紳士と少女達に放たれようとした瞬間・・・何かが竜に向けて投げつけられた。
投げつけられた物の危険を察知した竜は己が前足にて防ぐ。が、展開された魔法障壁を破りその前足に突き刺さった。
「っ!!」視線を投げつけてきた箇所と思しき場所に向けると金髪の人物が見える。
常人では到底この位置にものを投げつけて届かせる事は不可能だ、ましてや竜の鱗を貫くという所業もありえない。しかしあの者はそれをやってのけた。
刺さったモノを引き抜き確かめる。それは魔力の付与された槍だった。
「・・・!」
そして竜はその者を追う様にしてその場から離れていった。

三又槍を刺し、そして三又槍を引き抜く、血塗られた槍を新たな獲物へ振るう。
「ケッケケケ・・・」有翼妖魔は殺戮を愉しんでいた。
弱い者は死に強い者は生きる。それは当然の結果であり、彼らにとっては『狩り』であった。
歯向かうものは殆どなく、その一撃にて地に伏していく。
喩え歯向かう者がいても少数に過ぎず、この流れは止まる事はなかった。
道の端に目を向ければ倒れた女性の傍で少女と少年が泣き叫んでいる。
そしてその頭上に無慈悲に血塗られた槍は振り下ろされる。
戦う者も無く、止める者もない、そして少女達がその槍を止める術なども無い。
そう『死は避けれない・・・抗えない運命』
そして槍は・・・少女達を突き・・・させなかった。
「ゲェェェェェ」苦悶の表情を浮かべる有翼妖魔を見るとその腕は切られていた。
・・・故に槍は目的を果たせなかった。
「ふぅ、なんとか間に合ったな、さぁ・・・いこうか」
腕を切られ逃げ出そうとする有翼妖魔に一筋の線が入る。
「シロップ(甘い・・・といいたいらしい)」
その一言が有翼妖魔が聞いた最後の一言だった。

「大丈夫か?」と剣を持った男は少女達を見下ろしながら声をかける。
「う・・・うぅぅ・・・うえぇぇぇん・・・」緊張が解けたのかとうとう本腰で泣き出してしまった。
「困ったな」男は立ち尽くしてしまった。
「貴様がやったのかぁっ!」
 JOJO立ちをした男が指差しながら射るような視線で睨んでいた。
「そう思うかい、そうだよ」妖魔を倒した事だろうと思って答える
「母親を殺した上で、尚且つその子達も殺そうという非道!許せんっ。それでも貴様は人の子かっ」
「誤解だ! これは・・・」
「問答無用っ! 戦時中をいいことに欲望を貪るハイエナめっ!」
 男は剣を抜き切りかかってくる。
「成敗!」
「早いっ・・・仕方ない」
 剣で何とか受け止めるが相手の剣の流れは見覚えがある。これは・・・…。
 破龍闘神流の太刀筋、力の込め方、剣の接触タイミングをわずかにずらして二の太刀を狙う二重の斬撃、全てが昔剣を学んだ師の技の生き写しだった。奥義にあたるこの技、二重の極みを体得したのは同門では自分を含め、たった二人しかない。
「どうして、あんたが・・・」
「受けきっただと? お前は・・・」
「・・・見つけた」
 刹那の間に、三つの声と視線が重なった。
 少女の様な声が聞こえたと思うと空より少女が落ちてくる。

少女は手から血を流していた。その血をいとおしそうに舐めながら妖艶な笑みを浮かべていた。
「ふふふ・・・英雄アルカード」
「・・・その名をよりによって妖魔族から聞かされるとは、なんたる皮肉」
「・・・貴方くらいでしょう、使いこなせるのは・・・。」
「残念ながらアルカードは死んだ。武器は武器だ、所詮道具でしかない。だから誰にでも使えるもんさ」

(今の内だ・・・)
そう判断し、剣を鞘に戻して少女達を抱え逃げる。
(あの場にいたら必ずこの2人は死んでしまう)
しかし状況は最悪に近く周囲は妖魔に囲まれ始めていた。
「普通の道は無いな、普通じゃない道を走るしかないな」
「「え!?」」
そして・・・男は家の壁面を足場に走り始めた。

アルフォンヌは焦っていた。
彼女は千鶴とプララと共に自身の店から逃げ出したのだが体力的に恵まれているわけでもなく、このような事態に対処できる筈もなかった。
ここまでなんとか逃げてこれたのも千鶴の勘とプララのサポートがあった結果ではあったが状況はどんどんと悪化していく。
行く先々には妖魔が待ち構えて道が封鎖されているのだ・・・。
「千鶴さん、プララさん」
「どうしました?アルフォンヌさん」
「アルフォンヌさん、なんですか?」
「どこを見ても妖魔だらけ・・・もう駄目かもしれません・・・。エリザは逃げれたのでしょうか・・・あの子にはまだ幼い子ども達がいるのに・・・あの子達は泣いているでしょうね。」
「フラグのような発言は禁止ですよ、アルフォンヌさん。諦めた時に全てが終わる。可能性があるうちは少しでも足掻くのが大事なのです」
「むに〜」
千鶴達はこのような状況下においても・・・日常であるかのように落ち着いていた。
「あと少しで街からは出れます。そうすればなんとかなりますから今が一番肝心です。」
千鶴はそのような事を言った後、先頭に立って走り出した。
走る、走る、走る・・・。今日は私の生涯で一番走った日に違いない。
そんな時、前を走る千鶴が途中で拾った剣を構えた。
そしてその先には妖魔達が群れをなして待ち構えていたのだった。

(アルフォンヌさんの体力は多分もう限界ですね・・・道を切り開くしか無さそうです)
千鶴はそんな事を考えながら途中で拾った剣を構えた。
(相手は多数・・・私が囮になるしかないか)
「プララさん、お願いしますね」
「むに〜」
(この一言で『理解』されるというのはやはり有り難いですね)
「我が心は氷よりも冷たく、炎よりも激しい。その心より放たれし刃を我が友に乗せ全てを砕かん。」
(多分・・・まだ現状では30%位の威力しかでないでしょうね。・・・でも、私を脅威と思わせないと・・・)
「奥義 イニ・・・・」
急速に迫り来る気配に私は気付かなかった

駆け抜ける最中、前に3人の人影が見えた。
そして、その先には妖魔の群れが見える。
先頭の女性が闘気を練りはじめた・・・中々のものだがまだまだ足りない。
「しかたないな」
子供達を2人の女性の前に降ろして相棒に手をかけた。

「奥義 イニフィット・ブレイク!」
「はぁ!」
場に静寂が訪れる。私の一撃を眼前の男はあっさりいなして見せたのだ。
(この男・・・強い)
見た目からは想像できないが、あの戦場で見た男の姿と被る。
「あんたじゃ無理だ。ここは任せろ、道は開いてやるさ」
そんな事を言った男は妖魔の群れへと飛び込んでいった。

私はタイミングを計っていた。
千鶴の群れを引き付けるという意図が読めたからだ。
そんなプララの横を何かが駆け抜けた。
(え?)
黒い何かが走ったと思った時にはいつの間にか少年と少女が前にいた。
「おばあちゃ〜ん」アルフォンヌに対しての幼い2つの呼びかけが聞こえる。
そして千鶴の方に目を向けるとある男が千鶴の眼前にいた。
「ナル・・・カミさん?」
この世界にはいないはずの男と被って見え、私は眼を擦った。

「・・・助ける理由も別段無かったが乗りかかった船だ。それに・・・嫌な感じがするんだよな」
そんな事を呟きながら相棒を握り、妖魔達を切り裂く。
新しく相棒にした武器は全力を尽くしてくれたが力を出し切るには程遠かった。
「足りないな。やはりあの時の代物には程遠いか・・・」

「剣は回収しました、急いで逃げましょう」
「むに〜」
謎の男アーキッシュとの出会いの後、アルフォンヌさんと別れた私達はは近くの森にいた。隠した魔剣を回収する為だ。
アルフォンヌさんの事を思い出してみる・・・。
アルフォンヌさんは孫達との再会できた幸運を喜び、アーキッシュにお礼を述べていた。
「アーキッシュ様、孫達の命を救って頂き本当にありがとうございます。私はアルフォンヌ=ガントレットと申します」
「気にするな、やるべき事をやっただけさ」
「私達はクラウンフィールド皇国の親戚を尋ねる事にします。本当に有難う御座いました」
「あぁ、道中には人攫いとかに気をつけろよ」
そんな事を言ってアーキッシュは戦火に燃える町へと戻っていった。

アルフォンヌさんと別れた私は気が抜けていた。
二人の会話を思い出し、私はアルフォンヌさんとクラウンフィールド皇国で再会できる事を祈った。
そんな事をのんびり考えている状況ではまだ無いにも関わらず・・・。
「千鶴さん、前!」そんな声が聞こえたかと思うと
ドン!
「きゃっ」「えっ」
何かとぶつかる感触で意識が現実へと戻される。
「お嬢様、大丈夫ですか」老紳士が少女に丁寧な口調で労わりの言葉をかけた。
「大丈夫です、爺や」少女は凛とした声で応えた。
少女のその佇まいは気品に満ちていた。
「ご、ごめんなさい。お怪我はありませんでした?」慌てて私は謝罪した。
「私は大丈夫です。貴方様こそ大丈夫ですか?」少女は此方の非を問うでもなく此方の安否を尋ねてきた。
「問題はありません。本当にごめんなさいね」
再度謝罪をしていると少女の後ろから視線を感じた。先ほど少女に爺やと呼ばれた老紳士だった。
「・・・失礼ですが、貴方様のその背負った剣・・・確認させて頂けませんか?」老紳士は落ち着いていて、それでいて此方に有無を言わさぬ口調でそう言った。
「あまり見せるものではありませんが・・・非礼もある手前ですしから・・・どうぞ、御確認下さいな」私は少女と老紳士の前に魔剣を差し出した
「や、やはりこれは・・・。貴殿はどこでこれを手に入れなされた」
「残念ながらその事に関しては答えかねます」
「・・・?爺や、これは何か凄い物なのですか?」
「えぇ、とても凄い物ですよ。多分・・・この世界に一つしかないものです」
「爺やは物知りなのですね」
「お褒めに預かり恐悦至極。答えれぬというには何か訳ありなのかな?」
「えぇ・・・残念ながら。私の口から語れぬ内容ゆえに御容赦頂きますよう」
「そうですか・・・仕方ありませぬな。此方も急ぎの旅故にこれにて失礼します。お嬢様参りますぞ」
「それでは失礼致しますね、っとここで会ったのも何かの縁で御座いますね、お名前を伺っても宜しいですか?」
「私は水薙 千鶴です。此方の女性はプララさんです」
「むに〜、宜しくです。」
「私はアルマと申します。それでは失礼致しますね。」
そういって少女は足早に老紳士の元へと向かっていった。
「千鶴さん、あの方はアルテリア王女ですよ」
後でプララからその話を聞き驚く千鶴の姿があった。

あの後、程なくして有翼妖魔達の群れが森を襲撃してきたのだ。
大きな翼をした飛竜を中心とした有翼妖魔達の空襲による攻撃で森は炎上し、視界が火や煙によって遮られた。

「急いで逃げますよ」と言った私は先行して走る。
大きな翼をした飛竜が私を追う様に迫ってくる・・・。その距離はどんどん近くなる。
振り向きながら走っていた私は違和感を覚えた。
(あれ、足元が・・・ない!?)
「きゃああああああ」咄嗟に頭を庇いながら落ちていく。
ドボーン!
そして私は川に転落した・・・
岸辺から這い上がると近くに小さな洞窟があった。
穴を掘り魔剣を埋めた後に重たい体を引きずりながら歩くと多くの人影がぼやけて見えた・・・。
そして私は気を失った。

「急いで逃げますよ」千鶴の声が聞こえ、人影は駆け出した。
私は前に見える人影に追随するように駆けた。ε=====ヽ(●゚д゚)ノムニムニムニ
人影を追い続けるとその人影は森の出口手前で力無く倒れた。
「だ、大丈夫ですか千鶴さん」私は慌てて駆け寄るとそこには一人の男性の姿があった。
「あれ・・・?」私は少し戸惑った。
倒れた人物を放置も出来ず、私はその男性に連れて森を抜け出そうとする。
近くには鎖の切れた小さなドックタグが地面に落ちていて、そこにはアルディンという名が書かれていた。
私はその落ちているドッグタグを回収して森から抜け出した。
(この方もアルディンさんと言うのですね。どうやらこの方も傭兵のようなのでアルディンさんの事を聞いてみるのもいいかもしれないです。)
そんな事を考えながらその場を離れた。

千鶴は荷馬車に揺られる感覚で目を覚ました。
気がつくと手足には拘束具嵌められて、身につけていた服以外の物は取り上げられていた。
周囲を観察すると女、子供が皆、私と同じような状況下であった。
聞き耳を立てると5〜7人の男達の声が聞こえる。
「手足を拘束された上に武器になる物もなしか・・・」
体は重く、頭痛が激しい。寝ている間に何かを注入されたのかも知れない。
そして、現状では何も出来ない事を悟った私は闇に落ちる様に意識を急速に失っていった。

激しい音が聞こえ、その音に慌てて飛び起きた。
遠くで空を飛ぶ何かが光を発しているのが見え、森が炎上していた。
(ここも危ないかもしれないにゃ〜、居心地のいい場所だったんだけどにゃ・・・。)
そんな折に目に見知った人物が映る。たしかプララといっていた。
そして彼女が肩を貸して連れて歩いている人物を見て一瞬アルカード王子に見える。
眼を擦るとそれは別人のようだった。
(・・・気のせいだったかにゃ)
「にゃあぁぁぁぁ」と大欠伸を一つした後、大河ぁは彼女達の後ろを付いて歩くのだった。

ここに一つの国が滅びた。時代の波は逃亡者達を飲みこみながら・・・。

  作者

水薙

  Special Thanks

アルディン
メリュジーヌ

コメント

  • アキ仁王立ちは作者の判断により削除致しました。悪しからず御了承下さいませ。 - 作者 (2009年11月24日 23時18分13秒)