トップ 新規 編集 差分 一覧 ソース 検索 ヘルプ RSS ログイン

SS:胸のヒミツ

崖っぷちと呼ばれる魔法陣から程近い森の中、ボク達レギオンズソウルの面々はキャンプの準備をしています。いま、こうやって火を焚いていること自体が目立って危なくも思えるけど、この島の動物たちも一応火を恐れてくれるようなので、野営のときは無理せずに火を焚いたほうが良いんだってアルディンさんが言ってました。
この島に来てから、もう2週間。いくつも驚かされることがあったけどそのうちの一つが四季があることでした。半月前はまだ肌寒い程度で、厚着をするほどでもなかったけどこの数日はほんっっとに寒くてこっそり下着を増やしてたりします。

時々、焚き火にあたりながら、寝る準備をしていると背中にあったかい感触が。。
「ローシェ〜ル?」
「あ。姉さま?」
アスナ姉さまがちょっと怪しい声を出しながら、ボクの首に軽く手を回しながら抱きついてきました。
「ロシェ、最近寒いからってちょっと増やしすぎじゃないの?」
「そ、そんなことないよ?」
「そんなこと言って。姉さんの目は誤魔化せないのよ」
むに。
「ひゃぅ」
「これは何かしらねー」
「む、・・・・・胸・・・です。」
「ロシェルは一晩でおっぱいがこんなに育つわけか。いいわねー、少し
分けなさいよ」
むにむに
「わ、分けるって・・・・あうぅ」
「これだけあるなら、ちょっとぐらいいいじゃない」
むにむにむに
「はぅん」
「いいのかなー、あの人にバラしちゃっても〜?」
「だ、ダメ、ダメーっ」
慌てて両腕を振りほどいて振り向く。
「もぅ、これぐらいで泣くことないじゃないの。」
「・・・・・アスナ姉さまのいぢわる」
アスナ姉さまはため息を一つつくと、まるで怪盗のような手際でいつのま抜き取ったのか、カラフルとは言いがたい色の円盤状の物をひらひらさせている。

普段、ボクは男の子だってバレないように、透けるような服は着ないので、別にカラフルなのでも、派手なのでも、刺繍が入ってたりしても問題はないんだけど、なんだか見えちゃいそうな気がして、おとなしめな色の、・・・えーと・・・ムネを使ってます。
冒険中なので、丈夫でお手入れの簡単なのを選んだというの・・・・・・
あ、いや、ボクのムネの話はもういいんだってば。もぅ。

ひとしきり、アスナ姉さまに文句を言いおわると、ちょっと反撃。
「アスナ姉さま、使いますか?着けてるとちょっと暖かいですよ?」
「確かに最近寒いわね。でも、だからってそれを薦めることないんじゃない?」
「えー、でもさっき分けろって言ったじゃないー。それにアスナ姉さまこの寒さの割には薄着だし。」
洗濯物は大体ボクがやってるので、何を着てるのかわかってるのです。
「確かに言ったけど・・・・欲しいのはそんなんじゃないわよ」
一瞬、何かに誘惑された様子を見せつつ軽く笑って否定される。
「どうせ、ボクには分けられるほどないもん。」
ちょっと頬を膨らませる。
ただでさえ、女性ばかりのギルドなので、ちょっとしたイヤリングなどのアクセサリーや服の変化を敏感に発見されるのが楽しくもあり、大変なところだったりします。
もちろん、急に胸が増えたりすればあっという間に大騒ぎ間違いなし・・
・・・あれ?もしかしてボクそっとしておかれた?
・・・・確かに増やしたけど、ちょっとだけなんだよ?アスナ姉さまは目敏いなぁ。この分だと明日は減らした方がいいかも。

ぷち
アスナ姉さまは一瞬考え込んでいたボクの膨らました頬を突くと、立ち上がって足元の埃を払う。
「さ、明日は大変だからね、そろそろ寝ましょう」
「う、うん。おやすみなさい」
「ロシェ、おやすみ。」

アスナ姉さまが居なくなると、急に寒さが襲ってきます。
「うー。寒い・・・・・」
焚き火にあたっていても、底冷えする寒さ。
もうちょっと暖かいものが欲しいなぁ・・・。
そう思ってると、ちょうど白黒斑の虎が視界に入ったので声をかける。
「大河ぁ、おいで、・・・チチチ」
まるで猫を呼ぶように舌を鳴らすと、ちょっと気だるそうに寄ってくる。
眠いのかな?
「よしよし、大河ぁ今日は久しぶりに一緒に寝よ?」」
のど周りをゴロゴロと撫でながら話しかける。

この白虎は、大河ぁ=アルストリア。実は奇跡的な再会を果たした幼馴染のようなペット。
まだ、妖魔の国に居たころだから・・・10年近く前かな、お腹がすいて死んだように行き倒れていた虎を助けて以来、戦争で姉妹がバラバラになるまでの5年以上を一緒に過ごしたボクの一番の友達。スクールではいつも虐められていて、友達の居なかったボクには姉妹のほかに心を許せた数少ない存在。

大河ぁを飼うことに最初は母様に反対されたけど、大河ぁは、人間の言うことを理解できてるんじゃないかって錯覚するほど賢い子であっという間に家族の一員になっていました。その大河ぁと、戦争ではぐれたのでもう、会えないと思ってた。そんな大河ぁと偽島に来て、劇的な再開。びっくりしたのと、嬉しいのとで、そのときはいっぱい泣いちゃいました。
なんでも、現在の飼い主、アルテリアさんによると、戦乱から逃げて隣国シグルムントで再び拾われたんだとか。ううん。そんなのどうでもいい。会えて嬉しかったんだ。

大河ぁと一緒に寝袋に入ってもふもふして、暖まりながら昔を思い出していると、だんだん眠くなってきました。おやすみなさい・・・・・


そして、恐怖の一日が始まる。