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SS:暗躍せし者

「何!?アルマ様がいなくなっただと!?」
突然の知らせに我が耳を疑う。
「はっ・・・このような書置きがアルマ様の部屋に・・・」
慌てて内容を確認すると

『王家の輝冠があると言う偽島というところに行ってきます。
 心配しないでね?
                          アルマ』

蝶よ花よと育てられたアルマ様が一人っきりで何が出来よう!?
こうしては居れぬ、早急に探して連れ戻さねば!
「今屋敷にいる諜報部員は誰がおる?」
「ただいま総員任務についており出払っております。」
むう・・・平時ゆえ予備の人員を残しておかなかったとは、ワシも老いたか。
「仕方が無い、ワシがアルマ様の捜索に出る!」
「お、お待ちください!既に一線を退いたあなた様にそのような事をしていただく訳には・・・」
若造が生意気なことを!
「かつて王室諜報部頭領の栄誉を頂いたこのフェルディナンド。まだまだ若い者に引けはとらぬ!」
今はアルマ様のお付きとして控えておるが、未だ衰えておらぬところを見せてくれよう!

とは言え、アルマ様の手がかりも無くどうしたものか・・・
アルマ様とて外界の勝手は分からぬはず。とすれば人通りの多い場所で情報を得ようとするのではなかろうか?
うむ。町の中心部の大通りに大噴水があったな。あれならばアルマ様も目に付いて近づいている可能性もある。
ともあれ行ってみるとしようかの。

「お腹がすきました・・・」
情けない声が聞こえたかと思うたが、噴水の傍らに座り込んでいるのはアルマ様ではないか。
いやはや所詮世間知らずの姫よの・・・早速連れ戻すとしようか。
いや、ここで連れ戻してもまた同じようなことをしでかすのでは・・・・
世間の厳しさを知ってもらうため、もう少し見守ってみるとするかの。

・・・と、いきなり不審な者共に囲まれてるではないか!
すわ!お助けせねば!
む?なにやら木箱の上に青年がおるの?
「二日酔いの頭に響くから、すこし静かにしてくれないかねぇ。」
「ふざけんな!痛い目に合いたくなかったらさっさと失せろ!」
どうやらアルマ様を助けてくれるつもりのようじゃな?
お手並み拝見といたそう。

・・・一瞬でごろつき共を全て倒しおった!?
何物じゃあの男・・・いや、見覚えがあるぞ・・・
あの者はもしや、シルグムント戦役の折ベルフェゴール公を討ち取ったアルディン殿では!?
「よし決定だ。ついて来るか?
っと、ぼうず名前は?」
「アルテ・・・いえ、アルマと申します。」
アルマ様!また見知らぬものに無思慮に付いていこうというおつもりですか!?
いや、アルディン殿の元なら安全か?
ワシも陰ながらお守りしてアルマ様に世間のことを知ってもらうのも、王家復興後の統治に必要な勉強かもしれぬ。
館へは伝書鳩をしたため、このまま護衛に付くとしようかの。

あれから一週間・・・何事も無くギルドになじんでおるようじゃが・・・
ここのギルドマスターはかのベルフェゴールの娘共ではないか!
お互い気づいていないようなのが幸いだが・・・それも時間の問題かのう?
おっと、アルマさまの入浴の時間か・・・男装してるゆえ人気の無い時間に男湯に入っておるようじゃが
毎回ワシが入り口に幻術をかけて人が入らぬようにしておらねば、何回下賎の男に裸を見られたことかわからぬぞ!
・・・と、また一人入っていこうとする輩が・・・何!?ワシの幻術が効かぬと!?
あやつはベルフェゴールの中の娘か・・・女性の脱衣所に踏み込むわけにもいかぬし・・・
変事があるまではアルマ様の器量に任せるしかないのう・・・

む!アルマ様が出てきおった。
微笑んでおられるということは何も問題なかったということかの?
女性と言うことはばれたであろうが・・・騒ぎが起きなかった所をみるとシルグムント王家の者とはばれなかったようじゃの。
まあ一安心と言った所か。
・・・ん?
ここは男湯じゃよな?
男装しているアルマ様はともかく、なぜベルフェゴールの娘が男湯に?

「では、護衛をよろしく頼む。」
「いえ、私も渡りに船ですので。」
この者の名は霜月さくら。
偽島へ向かうPTを探しておった所を、アルマ様を密かに護衛するようにと雇い入れたのじゃ。
「しかし、突然私が言ってもギルドにすんなりと入れてもらえるのでしょうか?」
「これを持って行くがよい。ザラの評議員議員のお墨付きじゃ。これを持っていれば入れてくれぬギルドはなかろうて。」
ガスパール殿には世話になってばかりじゃな。王家復興の折にはお礼をして差し上げねばの。

遺跡探索も4日が過ぎ、アルマ様もだいぶ逞しくなられてきたようじゃ。
油断は禁物じゃが、ワシもだいぶ気を楽に出来るようになってきたな。
一時はどうなることかと・・・
ん?
アルマ様のおられる所でなにやら騒ぎが・・・?
む!これはまずい!
アルマ様!爺やが今まいりますぞー!!!

かつて王国を影から守りし英雄の一人。
今は王家の遺児を守りし一人の男。
後の歴史家は彼を称えて曰く―王家を支え暗躍せし者―と。